こんばんは。のぐちです。きょうは何となく煽情的なタイトルにしてみました。
沖縄戦の中で6月上旬にアメリカ第10軍司令官バックナー中将から沖縄守備軍司令官へ降伏が勧告され、拒絶されたといわれています。
では、沖縄守備軍たる第三十二軍司令官牛島中将は、降伏することができる立場だったのでしょうか?
簡単ですが、答えはNoです。その根拠を見ていきます。
陸軍内での犯罪を裁くために、
陸軍刑法というのがあります。沖縄戦当時は明治41年公布のものを昭和17年に改正されたものが有効です。この軍法の中では、降伏は犯罪行為とされています。具体的に条文を挙げてみます。
第四十条 司令官其ノ尽スヘキ所ヲ尽サスシテ敵ニ降リ
又ハ要塞ヲ敵ニ委シタルトキハ死刑ニ処ス
第四十一条 司令官野戦ノ時ニ在リテ隊兵ヲ率ヰ敵ニ降リタルトキハ
其ノ尽スヘキ所ヲ尽シタル場合ト雖六月以下ノ禁錮ニ処ス
第五十六条 第四十条、第四十二条、第四十三条、第四十五条、第四十七条、
第四十九条、第五十一条及第五十三条乃至第五十五条ノ未遂罪ハ之ヲ罰ス
と、あり、沖縄戦はたぶん野戦なので、「司令官」が「尽スヘキ所ヲ尽シタル場合」でも「六月以下ノ禁錮」であり、「尽スヘキ所ヲ尽サス」敵に降ったと判断されたら、「死刑」なのです。
「司令官」とは以下のように定義されています。
第十七条 司令官ト称スルハ軍隊ノ司令ニ件スル陸軍軍人ヲ謂フ
と、いうことです。どのあたりの部隊長までが司令官とされるかは明文にはありませんが、通常、親補職とされるのは師団長以上です。また、旅団長も司令官と呼ばれることがあります。
以上の定義に従うと、第三十二軍のなかで該当するのは以下の役職です。
第三十二軍司令官
第二十四師団長
第二十八師団長(宮古島)
第六十二師団長
歩兵第六十三旅団長
歩兵第六十四旅団長
独立混成第四十四旅団長
独立混成第四十五旅団長(石垣島)
独立混成第五十九旅団長(宮古島)
独立混成第六十旅団長(宮古島)
独立混成第六十四旅団長(奄美)
その他同等以上の階級の人物では以下の役職が該当します。
第三十二軍参謀長
第五砲兵司令官
海軍沖縄根拠地隊司令(陸海共同作戦の場合陸軍刑法の対象)
これらの人々が降伏をした場合、罪になる、ということです。該当の「司令官」が「自分が処罰されてもいいから部下の命は助けたい」という気分になれば降伏できるんですが、当時の日本では体面とかが大事なので犯罪者や場合によっては「卑怯者」呼ばわりされかねない状況ではまず無理でしょう。よって降伏はありえないということでしょう。